SiLENSe
発光デバイスのバンドギャップ解析
Modeling of bandgap in optical device
リリースノート
主な新機能・改善点
- 自由キャリアによる光損失計算の条件および設定に関する改良
- 自由キャリアによる光吸収係数の出力
- k·p モデルの実装
製品概要
SiLENSeは、LED素子のヘテロ構造における1次元バンド構造の解析および、LEDやレーザーデバイス特性の理解および最適化を目的としたシミュレーションソフトウェアです。
本ソフトウェアは、GaN、AlGaN、InGaN、ZnOなどのウルツ鉱構造半導体や、GaAs、GaInP、AlInPなどの閃亜鉛鉱構造を用いたLEDデバイスのバンド・キャリア輸送を精密に解析します。ヘテロ構造デバイスにおける詳細な特性の測定および最適化は、実験的には困難を伴います。SiLENSeは、このような課題に対して理論的な解析手法をとおして、効率的な研究・設計・開発を支援します。
製品特徴
①ソフトウェアの機能
SiLENSeは、各種半導体材料の性質 (例:窒化物:強ピエゾ分極、自発分極、低アクセプタ活性、高貫通転位密度など) を考慮したキャリアの1次元ドリフト・拡散輸送や発光スペクトルのシミュレーションをとおして、LED/レーザの特性を解析します。
出力結果
SiLENSeでは、主に以下の様なLED・レーザ特性 (出力結果) を得ることができます。
- バイアス値依存のバンドダイアグラム (伝導帯、価電子帯、フェルミ準位)
- 電子・ホールの濃度分布、電流密度分布
- 電場・電位分布
- 歪み・分極分布
- 発光性・非発光性 (SRH/オージェ) 再結合速度分布
- 電子・ホールのライフタイム分布
- 電流-電圧特性 (I-V特性)
- 内部量子効率、注入効率
- 量子井戸 (Quantum Well) 内活性領域の電子・正孔波動関数、重なり積分
- 発光・利得スペクトル、ピーク波長・半値幅
- 導波路 (TE,TM) モード、屈折率・電磁場強度分布、閉じ込め係数
- レーザー発振の閾値電流、出力レーザーパワー
- 共鳴フォトルミネッセンススペクトル
SiLENSeは、窒化物半導体に特有の物理特性 (強いピエゾ効果、自発的な電気分極、低いアクセプタ活性、高い貫通転位密度など) を考慮したモデルに基づき、LEDおよびレーザーデバイスの特性を解析します。
キャリア (電子・ホール) の輸送は、1次元ドリフト・拡散輸送モデル、または量子ポテンシャルモデルを用いて高精度にシミュレーションされます。詳細は、下記物理モデルをご参照ください。
活性層付近のバンドダイアグラム
バンドダイアグラムとキャリアの波動関数
物理モデル
- 発光性の電子・正孔再結合に加え、貫通転位コアにキャリアがトラップされることによる非発光性再結合も考慮されています。これにより、発光性および非発光性の再結合チャネル間の相互作用を解析し、貫通転位密度に依存したLEDの内部量子効率を評価可能です。さらに、ユーザーによる任意の非発光性再結合や、Auger (オージェ) 再結合の影響もシミュレーションで考慮されます。
- 窒化物半導体特有の自発分極およびピエゾ歪分極により生じるLED内の分極電荷を考慮したシミュレーションが可能です。
- 電子および正孔の統計には、縮退性/非縮退性に応じてフェルミ統計が適用されます。また、擬フェルミ準位に依存したドナー・アクセプタのイオン化率 (イオン濃度) も計算されます。
- LED構造内の歪みは、基板由来の初期歪を各層の歪緩和係数によって設定することで、ユーザーがヘテロ構造内の歪み伝播を調整できます。
- LEDチップのI-V特性は、横方向の電流拡散およびオーミック接触抵抗を考慮した直列抵抗モデルに基づいて計算されます。
- 単一量子井戸 (SQW) および多重量子井戸 (MQW) 構造における発光スペクトルは、ウルツ鉱構造半導体の価電子帯構造を考慮して計算されます。具体的には、電子および正孔の有効質量を用いたシュレディンガー方程式を解くことで、キャリアのエネルギー準位と波動関数を導出します。
- 指定波長の励起光により量子井戸内で生成されるキャリアの生成・再結合過程をモデル化し、PL (フォトルミネッセンス) スペクトルを計算する機能も搭載しています。
- TE/TM導波モードにおける電磁場分布は、III族窒化物の複屈折および周波数依存の誘電率を全スペクトル範囲で考慮して計算されます (※レーザーエディションのみ対応) 。
- 自由キャリアによる光学吸収損失は、電場分布およびキャリア濃度に基づいて評価されます (※レーザーエディションのみ対応) 。
- トンネル接合を含むキャリア輸送モデルにも対応しており、高度なデバイス構造の解析が可能です。
- 歪みが価電子帯などのポテンシャル分布に与える影響を考慮可能です。
②対応可能な半導体材料
SiLENSeは、LEDなどに広く用いられるさまざまな半導体材料に対応しています。
対応材料には、GaN (窒化ガリウム) 、AlN (窒化アルミニウム) 、InN (窒化インジウム) などの二元系窒化物半導体のほか、ZnO (酸化亜鉛) 、MgO (酸化マグネシウム) などの酸化物も含まれます。また、ボーイングパラメータに基づいて、AlGaN、InGaNなどの三元・四元混晶材料も扱うことが可能です。さらに、GaAs (ヒ化ガリウム) 、GaP (リン化ガリウム) 、AlGaAs、GaInPといったIII-V族閃亜鉛構造の半導体材料にも対応しています。
これらの代表的な材料に関する物性パラメータは、ソフトウェアに付属するデータベースにあらかじめ登録されており、ユーザーは必要に応じてデータの編集や追加を行うことができます。
③ユーザーインターフェース
SiLENSeは、シミュレーションの経験がない方でも直感的に操作できるグラフィカルユーザインターフェース (GUI) を備えています。
1つのGUI上で、ヘテロ構造の構築、計算条件の設定、結果の表示・出力までを一貫して行うことが可能です。さらに、バッチ処理機能を搭載したバージョンでは、複数の計算モデルを連続して実行でき、スクリプトによる条件設定にも対応しているため、効率的なモデル準備・運用が可能です。通常は1日程度のトレーニングで基本操作を習得できるよう設計されています。
また、SiLENSeは成長プロセスシミュレータ「STREEM InGaN/AlGaN Edition」との連携にも対応しており、成長条件がデバイス性能に与える影響を解析することも可能です。
動作環境
GUI (計算条件設定、計算結果出力) :Windows OS
8GB RAM, Windows 10, 11 Professional 以上