CVD SiC Edition

化学気相成長法 (CVD法) によるSiC気相成長専用エディション

For growth of SiC crystal by CVD, HTCVD method

製品概要

CVD SiC Editionは、SiC (シリコンカーバイト、炭化ケイ素) の化学気相成長 (CVD, HTCVD) の専用のエディションです。
SiCのバルク結晶、及びエピ成長プロセスに対応しています。
熱流体解析をベースに、化学気相成長法 (CVD法) によるSiC結晶成長をシミュレーションにより再現する事が出来ます。
原料ガスとしてC3H8 (プロパン) 、SiH4 (シラン) 、SiCl4 (四塩化ケイ素) 、SiHCl3 (トリクロロシラン) 、SiH2Cl2 (ジクロロシラン)、MTS (メチルトリクロロシラン) 、MS (メチルシラン) を考慮できます。
また、窒素やアルミニウムの取り込みモデルによりドナー濃度分布、アクセプター濃度分布を予測する事が出来ます。 (SiH4, C3H8系のみ)
HTCVD法による長時間バルクSiC結晶成長の場合、時間経過による結晶形状の変化が周囲環境 (温度場、流場、濃度場) に与える影響を無視する事は出来ません。
Virtual Reactor CVD SiC editionでは、長時間成長における結晶形状変化と伴に各時間の温度場や流れ場の計算が可能なため、より現実に近い現象をシミュレーションする事が出来ます。
また、結晶内の熱応力、基底面転位密度、貫通転位密度の解析も行う事が可能です。
従って、リアクタースケールの成長解析から結晶の品質に関する解析まで総合的に扱うことが可能です。

CVD SiC Editionではアドオンモジュールとして、以下をご用意しております。

  • 転位ダイナミクス解析モジュール:貫通転位の時間進展、及び転位密度を計算する事が出来ます。
  • 非定常解析モジュール:昇温工程 (温度) 、冷却工程 (温度、残留応力) の非定常解析が出来ます。
図1. リアクター内の化学種濃度分布
図2. 成長速度のSiCl4ガス流量依存性

製品特長

①ソフトウェアの機能

CVD SiC Editionでは気相からの結晶成長プロセスを支配している物理現象を計算モデルとして実装しており、温度分布、対流パターン、化学種濃度分布、熱応力分布、転位密度分布等の結晶成長の最適化において重要な物理量を求める事が出来ます。
結晶表面近傍は熱力学的平衡状態と仮定した準熱平衡モデルを基本としており、拡散・脱離律速の温度領域を考慮することが出来ます。
また、結晶成長反応だけではなく、成長速度に大きな影響を与える気相中の粒子生成 (Si粒子) とその輸送 (移流、熱拡散) 、及びリアクター内壁 (グラファイト壁) での寄生付着やエッチング、塩素を含んだガス種によるエッチングに関しても考慮されています。

図3. CVD SiC 成長における気相反応過程

出力結果

CVD SiC Editionでは、以下の様な計算結果を出力する事が可能です。

  • 温度分布
  • 対流パターン
  • 気相中の化学種濃度分布 (ガス分圧) 、Si粒子密度分布
  • 結晶表面における成長速度分布、結晶形状
  • n-p-ドーパント濃度分布
  • 各応力成分 (ミゼス応力、主応力、せん断応力)
  • 結晶内基底面転位、貫通転位 (らせん転位、刃状転位) 密度分布
  • 誘導コイルによるジュール発熱分布
  • ヒーターパワー電力量
  • 昇温中の温度分布の経時変化
  • 冷却中の温度分布、残留応力分布、基底面転位密度分布の経時変化

など

図4. リアクター内の温度分布
図5.リアクター内のプロパン濃度分布 (左) 、
及びSiC2濃度分布 (右)

計算モデル

CVD SiC Editionでは、以下の様なリアクター内で起こっている物理現象をモデルとして実装しています。

  • 熱輻射、熱伝導、対流伝熱
    熱輻射は、形態係数を用いたSurface to Surfaceモデルを使用して計算を行います。
    また、熱伝導に関しては、固体の熱伝導率の異方性を考慮する事が出来ます。
  • 2波長バンドモデルにより固体内部輻射を考慮することが出来ます。
  • 抵抗加熱、または誘導加熱による加熱
  • パワーの温度フィッティング
    指定座標の温度が指定温度になるようにパワーを自動的に制御する機能が実装されています。
    従って、より現実に近いプロセス制御を考慮する事が可能です。
    誘導加熱の場合は、実効電流の制御も可能です。
  • 化学種の多成分輸送(濃度拡散・対流による移流)
  • 気相中のSi粒子生成 (Siガス、またはSi含有ガス種からの生成)
  • 窒素ドーピング (nドーピング) 、及びアルミニウムドーピング (pドーピング) の考慮
  • 結晶界面形状の経時変化、寄生付着多結晶形状の経時変化
    結晶形状変化は、擬定常近似モデルを考慮して計算されます。
  • 窒結晶内熱応力、基底面転位の発生
  • らせん転位、刃状転位の伝播、及び結晶垂直断面の転位密度分布計算
  • 冷却プロセスにおける温度の変化、及び残留応力 (HASモデルを用いた基底面転位による緩和の考慮) の発生
  • 基板の反りによる隙間における熱抵抗の考慮 (境界条件)

など

図6. 各圧力における気相中のSi粒子密度分布 (左)
成長速度の粒子生成と圧力依存性 (右)
図7. パンケーキ型リアクター内の温度分布 (右)
流線(トレースアニメ) (左)