STREEM InGaN edition
高効率半導体デバイス (青緑LED, 半導体レーザ) 設計のためのMOCVD法によるIII族窒化物エピ成長プロセスにおける歪エンジニアリングシミュレーションツール
STRain Engineering in Electronic Materials-InGaN edition
製品概要
STREEM InGaN editionは、有機金属ガス (TMIn, TMGa/TEGa, TMAl) とアンモニア (NH3) 、キャリアガス (H2, N2) を使ったMOCVD法によるIII族窒化物ヘテロ構造の (0001) 成長方向の組成分布、歪み分布、転位密度分布等の特性を解析するためのソフトウェアです。
STREEM InGaN editionは、異なる成長ステージからなる量子井戸層とバリア層の配列からなるInGaN/GaNベースの活性層のヘテロ構造特性の解析を対象としています。
また、活性層の前後のバルク層 (バルクGaN, AlGaN等) も考慮する事が可能です。
製品特長
①ソフトウェアの機能
STREEM InGaN editionは、成長レシピがヘテロ構造特性に与える影響の理解と成長レシピの制御・最適化を目的としています。
特に、青色/緑色LED向けのInGaN/GaNヘテロ構造における、ヘテロ構造内の表面偏析を考慮したインジウム組成分布、格子不整合に起因する歪・応力、V字転位形成による応力緩和をシミュレーションにより予測する事が出来ます。
特に、以下の様な問題に対して解析する事が可能です。
- 量子井戸へのインジウムの取り込みにおける成長プロセス条件の影響
- 活性層のヘテロ構造におけるインジウム組成分布の予測 (表面偏析効果による量子井戸層へのインジウム取り込みの遅れ、キャップ層またはバリア層への取り込み)
- インジウムの取り込みと弾性エネルギーの連成解析
成長条件が活性層内の歪み分布に与える影響を予測する事が可能です。 - V字転位を介した緩和を考慮した歪分布、ヘテロ構造内の転位密度分布 (V字転位、基板からの貫通転位) を予測する事が可能です。


図2は、InGaN/GaN量子井戸内部のインジウム組成分布を示しています。
3番目の井戸において歪緩和が起こったため、インジウム組成の上昇が見られます。

図3は、InGaN成長後の温度上昇の際の温度のインジウム組成分布に与える影響をSTREEMにて解析した結果です。
灰色ラインは、インジウムの偏析を無視した理想的なインジウム組成分布を示します。
赤色ラインは、温度775℃の結果、青色ラインは、温度750℃の結果を示します。
温度の高い方が、表面のインジウムがより脱離することよって、バリア層であるGaN層におけるインジウム組成が低くなっている事が分かります。
計算モデル
STREEMでは、主に以下の様な特長的な物理モデルを実装しています。
- 独自のガス輸送モデルにより、成長表面での成長速度、偏析効果を考慮したインジウム組成分布を求めます。
この時、歪みによるインジウムの取り込まれにくさも考慮します。 - 転位の自己エネルギーと応力開放エネルギーのエネルギーバランスのモデルより、転位密度を求めます。
- 求められた転位密度より緩和した状態の有効格子定数を求めます。
- 転位同士の衝突による転位の消滅 (アニレーションモデル)
②LED, 半導体レーザ向けデバイスシミュレータSiLENSeとの連携
組成分布、歪み、転位密度はヘテロ構造内の分極状態や非発光性再結合定数等に影響を与えます。
STREEMで得られた組成分布、歪分布(有効格子定数)、転位密度をデバイスシミュレータであるSiLENSeで使用する事により、成長レシピがデバイス特性に与える影響を解析する事が可能です。
STREEMで出力されたテキストデータをSiLENSeで読み込むことによって、自動的にSTREEMの計算結果 (組成、格子定数) がSiLENSeの設定に反映されます。

③ユーザーインターフェース
STREEMでは、シミュレーションの経験がない方にも分かりやすいグラフィカルユーザインターフェース (GUI) を用意しています。
一つのGUIで、成長レシピ、条件設定、結果出力を行うことが出来ます。
通常半日程度のトレーニングを受けていただければ、習得することが可能です。
